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2020.8.25

あなたのペルソナは本当に役立っていますか?

written by ロイ

UXデザインが流行り出した時期にはペルソナという用語がよく話題に出ていましたね。「適切なペルソナの数はいくつか」とか「ペルソナの特徴をどれくらい具体的に定義すべきか」などの議論が活発にされていました。

最近はペルソナという用語はもう親しみのあるものになっており、普通のビジネスパーソンでも常識として知っている用語になっていますが、その一方、未だに適切な活用がされていないような気がしています。ペルソナというものに慣れて来て、逆にその価値や活用方法に疎かになっているとも見えます。

ペルソナは、実は、UXデザインの出発点であり、全てのプロセスの中で何かの判断をする際に基準になるものです。ペルソナのことをきちんと抑えておかないと、多くの仕事が適切に行われない可能性すらあります。

この際に、久しぶりにペルソナについてよく整理した記事を見つけたので、自らのリマインドの意味も含めて、以下にその内容を要約します。

Are your personas helping you do your job?

原文:Are your personas helping you do your job?

  • ペルソナの定義
    • ペルソナは顧客の中で意味のある特徴を共有するグループを表す必要がある。ペルソナの定義はサービスにおける有意味な差を見つけることである。(Personas are about finding meaningful differences.)
      • ペルソナの正しい数は存在しない。正しいペルソナの数は有意味な差を持つ顧客グループの数と同じ。
      • 従って、再利用を前提に作られた汎用的なペルソナは意味がない。
    • あなたのビジネスによっては、あるペルソナの持つ一つの特徴が価値がある場合とない場合がある。
      • 性別の差が意味を持つサービスと持たないサービスもある
      • 年齢の差が意味を持つサービスと持たないサービスもある。
      • さらに、1年の年齢の差が意味を持つ場合と20年以上の差が意味を持つ場合もある。
    • 都市や国など、対象ビジネスの規模が大きい場合、決まったペルソナのグループを全体のビジネスに当てはめようとしてはダメ。プロダクト(サービス)利用の各シーンで、異なるペルソナを定義して使う。
  • ペルソナの定義はビジネスモデルの定義になる
    • 複数のペルソナが定義された場合、各ペルソナ間の差によって、あなたのプロダクト(サービス)が提供する価値とその優先順位の定義が変わる。
    • 提供する価値の違いによって作成する機能やその精度が変わる。
    • 各ペルソナとそれに価値を提供するためのプロダクト(サービス)を考えることで、特定の顧客グループのニーズに適合した新しい、または改善されたプロダクトやサービスをデザインできる
    • ペルソナをさらに細分化するか、マージするなどの試しによって新しい顧客グループを発見できて、新しいプロダクト(サービス)を発送できる。
  • ペルソナは「決定を下すためのツール」
    • UXデザイン、そしてビジネスモデル検討のあらゆるプロセスの中で、適切な判断をするためにペルソナを参照する
    • ユーザーに提供できる価値を基準に判断する=きちんと定義されたペルソナが必要
    • よく定義されたペルソナは大きなビジネス成果を導き出すことができる

要約はここまでですが、ついでにいくつかのペルソナ定義の例を挙げてみます。

ペルソナのライブラリーは無用

先ず、先述の以下の部分ですが、

「都市や国など、対象ビジネスの規模が大きい場合、決まったペルソナのグループを全体のビジネスに当てはめようとしてはダメ。プロダクト(サービス)利用の各シーンで、異なるペルソナを定義して使う。」

私の過去の仕事でも似たケースがあって、「東京都民」という大規模で多様性のある人々が対象顧客になるサービスのペルソナ定義をどうするかに対して議論したことがありました。新しいサービスのアイデアを作り上げる仕事であったため、複数のチームが複数のサービスを同時に考えていました。

私が参加した際には、東京都の全ての人を表す100個を超えるペルソナを定義してペルソナのライブラリーとして作っておいて、各サービスでは必要に応じて適切なペルソナを選んで使おうというアイデアも出ていました。多分、ペルソナ定義にかかる努力を節約したかったのでしょう。

当時も「それは適切ではない」と私は否定しましたけど、上記のペルソナの定義の目的を考えると当たり前ですね。ペルソナを作ることが目的ではなく、ペルソナを定義するための分析過程が意味があるのに、汎用的なペルソナを使い回すことでは本末転倒になります。

本当は同一人物だとしても、何をしようとしているかによって、その場面で考慮すべきその人物の特徴は異なって来ます。つまり、同じ人であっても異なるシーンでは異なるペルソナとしてグルーピングされることがあり得ます。例えば、通勤にストレスを感じている人と、居住環境に問題を感じている人、仕事に困っている人は、同一人物である可能性もありますが、各サービスの異なる利用シーンでは異なるペルソナグループに属する可能性があります。

ペルソナの定義はつまり、解決すべき課題と提供すべき価値の定義となります。

多様・多数のユーザーが存在する場合のペルソナ

一方、1つのサービスを多様な人々が使う場合も考えられます。

例えば、携帯電話会社の顧客サポート用のウェブサイトを考えてみましょう。そこには若い学生から年寄まで、多様な性別の方々が、さらに全然異なるITリテラシーを持ってアクセスして来ます。このようなウェブサイトのペルソナ定義はどうすべきでしょうか?

アクセスして来る人々の割合などを分析することで手掛かりが得られるかもしれません。データを重視する分析家なら当然そのようなアプローチをしますね。しかし、残念ながら、既存データの分析では過去のことは分かりますが、あるべき姿は見えません。改善後のデータは未来にしか手に入らないものです。

このような場合は、ユーザー群の持っている課題やこのウェブサイトが提供する最も大きな価値から考えることができます。ユーザーには、今持っている携帯と関連した問題を解決することが最も価値があることになります。従って、このウェブサイトが最も注力すべき点は「より多くのユーザーの問題を解決すること」です。

ではこのウェブサイトのペルソナの定義において最も特徴的な差は何になりますか?性別の区分は必要でしょうか?住居地域は?職業は?趣味の定義は必要でしょうか?

当時最も大事なペルソナの特徴として挙げたのはITリテラシーでした。ITリテラシーが低い人が問題解決できるのであれば、ITリテラシーの高い人でも問題解決はできるはずです。優先順位として、先ずはITリテラシーが低い人からきちんと対応してあげて、その後にITリテラシーの高い人ならより迅速に対応できるような機能を追加していくことになります。

これは、ペルソナからサービスの形を導き出すのではなく、サービスが提供すべき価値からペルソナを定義する例とも言えます。

業務システムのペルソナ

最後の例として、エンタープライズ環境で使われるシステムのペルソナを考えてみましょう。

大企業の中には多様な人々が働いており、彼ら・彼女らが使うシステムのUXデザインは仕事の生産性の面でとても大事です。そのようなシステムのために必要なペルソナを定義する際に考慮すべき特徴はなんでしょうか?

性別、趣味、年齢からグロバル企業なら国籍や人種に至るまで多様な要素があり得ますが、それらの特徴のどこまでをペルソナに反映するかは対象の業務によって変わって来ます。各業務を行う際の作業者としての持つべきスキルの前提や特徴をペルソナに反映する必要があります。

このような場合はB2C向けのサービスで大事にされていた個人的な人格としての特徴はあまり意味がなくなり、作業員としての共通点をペルソナの特徴として定義することになります。一見、「え?こんな簡単なペルソナでいいのかな?」と思われるかも知れませんが、それは「あえて」必要な特徴の定義だけに止めているとも言えます。

価値があるペルソナとは

他にも多様なケースがありますが、大事なのは、対象のサービス、ビジネスを考慮した時に、意識する価値がある特徴を区分し、それを適切に表す単位でペルソナを定義することになります。

そして、もう一つ大事なのは、ペルソナの定義に止まらず、その後のプロセスの中で何かしらの判断が必要になった時に、そのペルソナを判断の基準としてきちんと活用することです。

そしてプロセスの進行と共に得られた追加の情報やビジネスの展開に応じて、既存のペルソナを改善していくことです。

ビジネスの各シーンで必要な判断にペルソナが適切な情報を提供できていない場合はそのペルソナは改善が必要です。ペルソナはビジネスと共に成長していくものともいえるでしょう。

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